〜つづく。〜
8月25日、またまた晴れ。暑いし。
8月24日。晴れ。今日ももちろん、暑いのよ。
2週間の御無沙汰でした。あたしは久しぶりに風邪ひいちゃって、熱がぜんぜん下がんなくて
タイヘンだったよ。でもそのおかげで映画をたくさん観られたし、抗生剤にたよんないで自己治癒
力、ってやつを試すことができた。あなたはどうしてた?
ーー8月24日。晴れ。今日ももちろん、暑いのよ。
13時半からPOISON IVY。昨日と同じ、Sがあたしのドラムにピアノをダビングする。
こないだも書いたけどベースのかわりに、ドアーズ方式でオルガンの低音を弾く、これがノッってくると
面白いんだってSは云う。
最初は単音ばっか弾いててつまんないんだけど、曲の欲しがってるグルーブ。。。みたいなもんが
掴めてくると楽しくなる。どの曲にも欲しがってるリズムがあり、音色がある。。。それを探っていくのが
楽しいんだね、きっと。
ねえねえ、デジピが嫌いってこないだ言ってたよね。そんなに好きなもんがハッキリしてると苦労しない?
Sはいっしゅん真顔になったけどすぐあら。。。わかる?と笑った。そーなんだ、孤立したよーな気分になっ
ちゃう、時々。
孤立かー。
でも個体差ってあっていい、みんないっしょである必要なんて無いんだし。
”世の中に合わせなきゃいけないんじゃないかプレッシャー”を感じたらこう云うんだ、
だってあたし、個性的だから!
だってあたし、独自の感性、があるから!(このへんで笑っちゃうんだけどさ。)
・・・ってさ。そんくらい思っとかないと、間違ってんじゃないかってココロ細くなっちゃうよ。
ーーねえねえ、こんなふうに思うことあるんだ、あたしの頭の上にさ、なんかでっかい光のバルブみたいなのが
あってさ、そっからこう、ぴかーっとまっすぐに光が照射してんの、あたしは頭をぱかっ、と開けてそれを受け
止めてて、なんつうかあったかくて有り難いかんじがして、すごく元気になるんだ、そういうのってない?
ーーそういうのってない?。。。って云われましてもナンとも返し様が無いんでございます。
あのさ、それさ、あんまし人様の前で云わないほうがいい、かもよ、電波系?って思われちゃう。
光のバルブが照射って。。。ヤバい。
Sのハナシにはホント、ついていけない時があるんだけど、じつはこれにはちょっとピンとくるところもあったんだ。
誰だって独りで生きてる。コドクを恐れたらなんにも出来ない。でも孤独、になり過ぎたら自分を見失う。
そんなあやういバランスで生きなきゃならないのが人間ってものだとしたら、
何かの信念、が要る。信仰、っていってもいいかもしんない。あたしの感じだとそれは特定の宗教に入る、
ってこととも違う。WHAT THE WORLD NEEDS NOW,IS FAITH,SWEET FAITH。。。ってなもんだ。
あたしたちはいっしょに何かを探そうとしてる、歌うことで救われようとしている。年下の女の子たちを
かばってやらなきゃならないとつよく思うのもその理由による。
LPNo.9,POISON IVYの歌をやる。もういっかい歌わせて、というあたしをNさんが止める、もう
じゅうぶんいいのが録れてるよ、こっちに来て聴いてみなよ。
リーバー&ストーラーの曲は本当に楽しい。的を得ていて正確。簡潔にしてエレガント。
この素敵さを伝えることが出来るだろか?
でも歌ってて思った、音、はあたしにとってよろこびと驚き、以外のものではない。
予想がついてしまうものをどうしてやりたいと思うだろう。
夕方からDRIP DROPのリズム。ディオンのバージョンのロックなかんじと、ドリフターズ・バージョンのジャズな
かんじ、をテンポチェンジで表現してみた、とS。ちょっとややこしくて何度か失敗。しょーがないでしょほかなんにも
きいてないんだから。5回めくらいでやっとオーケー、ピアノをダビング。
しっかしいー加減なピアノだよ、あんた本当にクラシック習ってたんかい?
あろうことかベースはもういいや、あんたのドラムとあたしのピアノでじゅうぶん、この曲は、
だって拓夫さんが来てくれるんだし。なんて云ってる。うへえ。
あ!これ、サックス・ソロにしようと思った部分が抜けてるよ、とS。
え、本当?とあたし。
ほんとほんと。こっからここ、もう16小節なきゃいけないのに、あんたやってないじゃん。
やってないじゃんってあんたが聴いてないからじゃん。
ちょっとケンカになりそーになる。ドラムとピアノを別に録ってるからこういうことが起きる。
アナログ録音はこっちのテイクとあっちのテイクをちょちょっ、とつないで〜、
。。。なんてことは出来ませんのです。まして1本のマイクで録ってるんだから一発勝負もいいとこだ。
緊張感と作業疲れがいっぺんに出て逆上しそうになったけど、
ーーま、いいや、サックスのソロはナシにしよう。何が何でもオリジナルみたいじゃなきゃいけない、
なんてこと無いさ。
そんでさ、DRIP DROPなんだけどさ、
何事もなかったように云われて拍子抜けする。この立ち直りの早さ、Sのいいところかもしんない。
(あのいー加減なピアノを聴けばわかる。)
あたし、この曲は模子がうたったらいいんじゃないかと思うんだよね。
あんたもそう思う?あたしも合ってると思う、アイツ、ヤル気のまったく無い女だから。
この曲ってブルースでしょ、あんましヤル気出すと本格派、みたいになっちゃうじゃん、
うん、本格派、はいいけど、本格派と思われたい、ってヤダよね。
そーそー、アイツだったら間違っても本格派、になんか聴こえない、云っちゃ悪いけど。
”ほらさ、セサミ・ストリートで子供が歌うでしょ、あんなかんじ。”
”わかる〜!じゃ、そうしよ。”
っつうことで話がまとまった。たまにはこんなふうに見事な同意をみることもあるのだ。
〜つづく。〜
8月23日。晴れ。何度も言うけど暑い。
LOVE POTION NO.9のドラムとピアノ、ベースをやる。サーチャーズのライブ・バージョンみたいに
やろう、ということになり、だいぶテンポを上げる。
Nさんとっておきの”安いリボンマイク”を使って試し録りをしたらすごくいい音。ドラムを録るっていうやり方も
本当にいろいろで、今でも覚えてるのはぜんぶのパーツにマイクを立てて、その上シンバルをガムテープで
ミュートしてほしい、と言われたこと。あたしのライドはパイステのでっかいやつで、サステインが長くてキラキ
ラ、ごつごつした音でそこがスキなんだけど(ジルジャンはちょっと、上品でおとなしい。)それが気に入られな
かったみたい。こ、こんなことしたら鳴りが死んじゃう、と思ったけど空気を読んで云わなかった。オールド・ラデ
ィックのセットは野暮ったい倍音が命なので、そんなハイファイに録ったらぺたーん、と平板な音になっちゃうのだ。
Nさんの録りかたは本当に野蛮だ。マイクはそのリボンマイク1本、あたしの頭のちょっと上くらいに立って、
叩いてるとちょうど向き合ってるみたい。
何がいい音か、ってのも人それぞれでムズカシイ問題ではあるけど、私にはすごくいい音に聴こえる。
雑で、整ってなくて、そこがいいのだ。
それにしてもコードもクリックも歌もなにもない状態でドラムだけをやらされるのには参る。人の音に頼れないし、
曲がすっかり頭に入ってなきゃなんないし、頭のなかで歌えてなきゃいけない。聴こえてんのは自分のドラムの
音だけ。あたしはイマジネーションを総動員して曲の完成形を勝手につくる。
3〜4回でOKが出た、あ〜テンポ早くて疲れた。
あたしのドラムにSがピアノをダビング。
どんなふうに弾くんだろ、と思って見てたら、ノリノリでがんがんに鍵盤を叩いてる、あんたはジェリー・
リー・ルイスなのか?
Nさんのスタジオのピアノは決してアタックががんがん出るようなピアノじゃない。むしろ繊細な優しい音で、
調律がムズカシイって聞いた。あんなに叩いて大丈夫なのかなー。
後半だけもーいっかいやらして!というSをNさんが止める。いいよこれで、どこが問題なの?
そんな何回もやることない。
プレイバックを聴くと、なんだかミョーなバンド感がある。
いやー、ドラムとピアノって似ているよね、上から力をかけて音を出すところがそっくりだよ、原始的な構造って
言えるんじゃないの、とS。Nさんがリミッターをかけたらなかなかの迫力、別々にやってるみたいじゃないね、
と笑う。
”あたしはデジピ、嫌いなの。もう気が狂いそーになる、”んだってさ。”やたらボタンがたくさんあってさ、
なんかダイヤルみたいなのを廻すとオルガンとかローズ、とかってさ、そんなにオルガンやローズが弾きたいんなら
ハモンドとかフェンダーローズを持ってきたらいーじゃん。”
今日はまだ歌入れじゃないので、女の子たちは来ない。録音にベーシストを呼ぶべきか考えたんだけれど、
結局ドアーズ方式でオルガンを使うことにした。Nさんおすすめのコルグのオルガン、ラブリーで芯のあるいい音だ。
ちょっと休んでから次のPOISON IVYにかかる。ひたすら録音はつづく。
〜つづく。〜
8月20日 晴れ。今日もめっ。。。ちゃ暑い。
8月20日。晴れ。今日もめちゃめちゃ暑い。
『青空のように』のコーラス・ダビング。FORESTONESのメンバーが揃う。さっきからNさんとSが16チャンのトラックをどう使うか、について話し合ってる。H澤さんがエクレアとシュークリームを大量に買ってきてくれて、えりーぜと模子は大喜びしてる。
なんでもテープ、というものは廻せば廻すほど劣化してしまうので、それを最小限に食い止めたいのと、
録った音をまとめる”ピンポン”って作業をするとここでまた劣化するので、いかに効率的に音を入れていくか、取捨選択するかが大事なんだそうだ。ふーん、そっか。
ふたりが話してるあいだに一応メンバーを紹介すると、
あそこで鏡をのぞいて前髪を直してるのがえりーぜ、17歳。ソプラノ担当。
なんでえりーぜかって云うと、はじめて会ったときあんた、なんか楽器できる?って訊いたら、出来る!ピアノで『エリーゼのために』だったら弾けるよ、って言ったから。六本木の都立高校に通ってて、どうもサボリとチコクの常習者らしい。彼氏はひとつ年上、ロックバンドでベース弾いてる。いっしょにバンドやってたけど、”いっつもケンカになっちゃうから今はやってない”んだって。一日5食はあたりまえ、いまも2個めのシュークリームを頬張ってる。よく太んないよなあ。新陳代謝がいいのかねえ。若いからねえ。
あたしの隣にいるメガネの女の子が。。。って言っても37、8なんだけど。文月想子ちゃん。2ndアルト担当。歌詞も書く。文学好きで寡黙、でもすごく笑い上戸。教会のゴスペルクワイアで歌ってた彼女に声をかけたのは去年の冬だから。。。もう8か月も前か。
この方もちょっと変わっていて、何かの話で理想のタイプは?って訊いたら江戸アケミと太宰治、だって。あんた、それじゃシアワセになれないよ。。。って老婆心ながら忠告したくなったけど、メガネの奥のキラキラした瞳をみてたら何も云えなくなった。−−大丈夫、想子ちゃんには想子ちゃんのシアワセがある。いちばんスキな小説はフィッツジェラルドの『冬の夢』。行間からにじみ出るどうしようも無い切なさ、が良いんだって。でも村上春樹は嫌い、ってところにあたし、すごく共感する。
そして。。。コイツがうちのグループのワイルドカード、曖昧模子、19歳。1stアルト担当。時間通りになんて来やしないので、想子ちゃんに迎えにいってもらった。案の定まだベッドに居て、え?レコーディングう?そーだっけえ。。。と云ったきりまた寝そうになったんで、たたき起して連れてきたんだそうだ。
コイツはまるで動物みたいだ。食べることと寝ることしか考えてない。いつも眠そうで、ぼさーっとして覇気が無くて、
でもコーラスのヴォイシングだけは誰よりも早く理解する。2度とかのテンションでも平気で歌ってる。
なんで?って訊いたら、昔お母さんにピアノ教室に連れていかれて、ピアノの方はさっぱり上達しなかったけど、何かの役に立つかもしれないからってソルフェージュとコールユーブンゲンを先生に毎週やらされた、でもカンツオーネまで行かないでやめちゃった、んだって。
勿体ないね、でもその判断は正しかった、と思う。もしもそれをおしえないで模子を放りだしたとしたら、まったくハシにも棒にもかからん女になってただろう。有り難う、先生。
そしてあたしは。。。リーダーでリードヴォーカルとドラムを担当してます、SINDEE&FORESTONESのリーダーです。
まあ、これがあたしたちのグループです。どうぞよろしく。
〜つづく。〜
8月19日。晴れ。めちゃめちゃ暑い。
今日からミニアルバムのレコーディング。あたしは不安とキタイが入り混じった気持ち。プロデューサーはなんかヤケに張り切ってる。アナログ録音にこだわっているらしい。
今の時代になんでアナログ?あたしもそう思う、エンジニアのNさんは打ち合わせのときはんぶん呆れた顔をしてた、今はもう作られていないアナログのテープ、Nさんが手がけていた有名なバンドがこのあいだ解散して、それで余ってしまったものーーをそっくりそのまま使わせてもらえることになった。
これはよい兆しだよ、やれ、ってことだよ、ってプロデューサーは。。。長くて面倒くさいな。Sでいいや、Sは云う、興奮したおももちで。
今日と明日はSの一人多重録音にあたしたちが参加する形。曲は『青空のように』。
Sはもう音楽をやめよう、と思っているときにこの曲に”ものすごいショックを受けた”んだそうだ、「なんかもう、一年中ニコニコしちゃうような幸せな気持ち」になってこの曲のはいっているアルバム、『NIAGARA CALENDAR』を”ずーっと聴いてた、”
あたし、まだ音楽に感動できるんだ、ってことに”感動した”んだそうだ、
”なんて言うか、音楽のいちばん素敵なところ。それって人それぞれだけど、自分はこういうものを素敵と思う、
素晴らしいと感じる、それじたいを信じる気持ちが戻ってきたっていうか”、
(Sのいいかたはときどき抽象的でまわりくどい。一応そのまま書いてる)
”だからいつか絶対カバーしたかった、でもまだ全然出来ると思えなくて、でもいま出来ないんだったらいつ出来るの?と思って、”あたしたちの助けを借りて録音に踏み切った、というわけ。
13時半からずっと、いまはカスタネットをやってる。(一度ドラムのOKテイクを録ったけど気に入らなくてもう一回やり直して、ちょっと時間がかかってる)。ひとりで8回ダビングしてる。あたしたちも手伝いたかったんだけど、ずーっと3連を鳴らしつづけられなかった。意外にムズカシイんだ、これが。
Nさんがコントロールルームから声をかける。「なんかね、揃いすぎてて量感がない。もっといい加減にやったらいいかもしれない。」
モニターでSのようすを見てたら笑っちゃう、Nさんに云われた途端にいい加減になってる。指にヒモをいい加減にひっかけて、
デニムのひざ上のとこにカスタネットを打ちつけてるけど、これって。。。ただしい奏法なのかしらん(違うとおもう。)
あ、でも本当だ。揃わないでズレたほうがたくさんの人がやってるみたい、に聴こえる。
〜つづく。〜

